ライトウエイト(250cc)クラスの優勝は、大方の予想に反して、若冠16歳の少年、ライラックを駆る伊藤史朗選手でした。
その後、ヤマハと契約して世界GPも走り、1963年にはヤマハにGP初勝利をもたらした彼ですが、拳銃不法所持で訴追されやがて失踪・・・。
小林信也著「伊藤史朗の幻」(CBS・ソニー出版)を読みました。
現役ライダー時代の話というよりは、失踪に至るまでの経緯やその後のアメリカでの生活について、後に伊藤史朗さん本人の口から語られた内容になっています。
小説「汚れた英雄」は、ご本人も登場するとはいえ、かなりの部分で伊藤史朗さんをモデルに書かれていると感じました。
最愛の母との別れ、ワルかった少年時代、レースで活躍し派手で豪快な生活、それでいて繊細でちょっと影があって・・・。
第2回の浅間火山レースに出るために、他社のライダーの走りをこっそり見て研究している様は、北野晶夫のそれと完全にダブります。
映画でのワンシーン、部屋中をバラでいっぱいにするあのシーン、実は伊藤史朗さんは自分でホテルの部屋までバラの花を運んで実際にやったのだそうです。
でも。
総じて漂う儚さ。
この本のラストも、含みをもたせているとはいえ、それが実現しなかったであろう儚さが胸を締め付けます。
なかなか手に入らない本だとは思いますが、是非読んでいただきたい一冊です。
- 伊藤史朗 – 人物伝
- 浅間の英雄 伊藤史朗 – 日本モーターサイクルレースの夜明け